Lesson1-1 掃除の概念

塵ひとつ見当たらない場所といえば、みなさんはどのような空間を想像するでしょうか。
高級ホテルや美術館、お寺の境内など洗練されたイメージを抱く場所では、
隅から隅までが清潔感にあふれ来客を迎える準備が整えられています。

公共空間や住空間は、人の心に清らかさや居心地の良さをもたらすものであり、
掃除は精神的な豊かさを育むひとつのライフワークだと捉えられます。
「やらなければいけない」「面倒だな」と感じてしまいがちな家事の1つではありますが、

その概念にあるポジティブなイメージを元に、お部屋と心を整える方法を探っていきましょう。

禅に見る掃除とは

日本は世界でも稀に見る清潔大国ですが、清掃という概念は幼いころより自然と身につき習慣化されています。
日常的に掃除をする親の背中を見る子どもたちは、自分からお手伝いしたいと言うこともあります。
また小学校では清掃時間が設けられ、身の回りを整えるという感覚が生活の中で養われます。

では、なぜ私たち日本人はこれほど掃除にこだわり、掃除を生活の一部として組み込むのでしょうか。

一度海外に目を向けてみましょう。

実は海外では、学童期にクラス全員で教室を掃除するという集団行動は稀であり、他国ではあまり理解が得られないルーティンでもあります。
ある種“お国柄”とも思える清掃活動ですが、実は掃除を行う目的は環境美化に留まるだけではありません

禅の世界で最も重要とされる教えに、“一掃除二信心”という精神論があります。
信心とは神や仏に対する信仰心を表す仏教用語ですが、この言葉は尊崇の念よりも掃除における意義が大きい事を示しています。

散らかり汚れた部屋では煩悩に憑りつかれ、心の清らかさを保つことができないというのが禅の考え方です。

“清掃活動が心を磨き、豊かな人生を創り上げる基盤となる”

掃除は単なる作業ではなく、ゆとりある暮らしを目指す心得として、
日本人が昔から大切にしてきた習慣だと言えるでしょう。

心の健康

私たちの生活は、心と身体の健康が最も重要な基礎となります。
身体の健康を保つためには、バランスの良い食生活に加え、適度な運動が大切です。

それでは心の健康とは何でしょうか。

心の健康とは活力や積極性など、豊かさにあふれた精神的な安定であり、
生活に楽しさや意欲を感じる充足感だと言えるでしょう。
身の回りの環境はモチベーションやバイタリティといった精神面を大きく左右する要因となり、
自分にとってベストな環境づくりに励むことが心の健康維持に繋がります。

食べカスがあちらこちらで見られるリビングや放り投げられた雑誌、脱ぎっぱなしの靴下など、目にするたびに「いつかやらなくては」と思う毎日では、その都度ストレスやプレッシャーを感じることとなります。

”散らかるたびの掃除”は誰にとっても億劫ですが、
日にちや時間を決め、無理のない範囲で家じゅうをキレイにできたなら、
それは大きな達成感と爽快感が合わさりスッキリ感も高まるところでしょう。

掃除とは、単なる”面倒ごと”ではなく、心にゆとりを与えリフレッシュ効果をもたらすものです。
メンタルヘルスを保つための大切な時間と捉えることでプレッシャーを感じずに作業が進められます。

掃除は“簡単・時短・楽チン”が鉄則

掃除に苦手意識を感じる方や、忙しく隅々まで手が回らない方こそ、次の3原則への意識が助けになるでしょう。

掃除は“簡単・時短・楽チン”をキーワードに、自分に優しく進めていくことで持続的な維持が実現します。

家庭内における大部分の汚れは、方法や道具次第で効率的に掃除を終わらせることができます。

例えば油や生ごみの水気で汚れるキッチン壁は、ギトギト感を目の端で確認しつつも気づかぬふりをしてしまいがちです。

放置すれば汚れの層になり、さらに強固な敵となって立ちはだかりますが、
台所周辺の頑固汚れは重曹スプレーと雑巾を用いるだけで瞬く間に変化が起こります。

重曹はあらゆる場面で多用できる掃除時間の相棒でもあり、電子レンジやトースターなど食品が直接入る器機でも力を発揮します。

元を辿れば、汚れは化学反応と密接な関係があり、吸着に対し脱着できる成分を使用することで、効果的に除去することができるのです。

つまり簡単でラクな掃除とは、適切な術とワザを知っておくだけで誰もが挑戦できるものであり、
少しの知恵で暮らしに磨きをかけられるというところも押さえておきたいポイントです。

日々の清掃=面倒と繋げるのではなく、”知識”をプラスし、清掃+知識=楽しい時間と頭の中で化学反応が起きたなら、それは相乗効果となってあなたの毎日をより輝かせることでしょう。