Lesson1-2 掃除の意義

掃除をしない暮らしとは?

私たちの生活から掃除がなくなったとしたら、どのような住環境が待っているでしょうか。
人にとって家とは本来、”快適でリラックスできる場所”であるはずです。

しかし、もし家の床が物で埋め尽くされ、食べ終えた食器皿や飲みかけのぺットボトルが片付けられないまま散乱していたなら、みなさんはどのような気分になるでしょうか。

滞留した空気のなか独特な臭いが充満し、部屋全体がどんよりとした空気感に包まれたなら、気持ちは晴れやかでいられるでしょうか。

掃除とは、人間の健全な生活に欠くことのできない日々の営みであり、心身ともに健康でいるための重要な術でもあります。
風呂場や水回りで見かける黒カビや、知らずに増殖するバクテリアなどは正に菌の温床であり、放っておけば体調に影響を及ぼす厄介者です。

また油汚れが蓄積された換気扇や、ほこりが溜まったエアコン、塵でパンパンになった掃除機内のごみ袋などは、放置を続けると機器の性能を下げてしまいます。

そうした場合、結果的に本来のパフォーマンスが発揮されず、労働のわりに成果が見られないなど、無駄に時間と労力を使うことになりかねません。

適度な掃除を行わなければ、いずれ生活に支障をきたす日がやってきます。

掃除とは人間らしい生活を保つために必要不可欠な習慣であり、精神衛生を維持するために行われるべき、大切な家事だと言えます。

年の瀬の大掃除

年の瀬の大掃除は、昔から日本文化として根付いてきた慣習です。
歴史を辿れば、年末の大掃除は平安時代にまで遡り、
宮中で歳神様をお迎えするため12月にすす払いをしたところが起源だと伝えられています。

”すす払い”とは、囲炉裏から家じゅうに広がるすすを掃除するという意味に由来する言葉であり、清めの儀式として昔から各地域で行われてきた風習です。

今も昔も変わりなく、新たな年を気持ちよく迎え、1年が幸福で満ち足りたものになるよう心を整える時間として、
大掃除は師走の時期の重要なイベントとして定着してきました。

普段行き届かない箇所も、この時ばかりはピカピカに磨き上げられ、清掃が終わった際は誰もが晴れやかな気分で満ち足ります。

課題をやり遂げたような解放感に包まれる年の瀬の大掃除は、気分を上向きにする心理的効果も大きく、1年の最後に行う作業として多くの人が力を入れるのです。

リラックス効果

セロトニンと呼ばれる神経伝達物質をご存知でしょうか。

別名”幸せホルモン”とも呼ばれるこの物質は、分泌されると幸福感や安心感を増幅させリラックス効果をもたらします

一見すると掃除とは無関係に思える幸せホルモンですが、
掃除中に度々行われる反復動作が、ホルモンの分泌を促し
メンタルヘルスに一役買うことが脳科学により実証されています。

床の雑巾がけや窓ふき、掃除機がけ、また歩くなどの繰り返しの動作は脳に刺激を与え、こうした運動がセロトニンの量を増やし、集中力ややる気を引き出すと言います。

気が重いまま始めた掃除も、気が付けば夢中になっていたというのはよく聞かれる話です。
気分をリフレッシュさせ気持ちを落ち着かせるなど、
清掃活動が解放感や満足感を与えるというのは、多くの人にとって意外ではあるものの事実なのです。

掃除における意義とは、清潔で快適な住まいを保つだけではなく、
メンタルヘルスをきちんと保つために行われる望ましい生活習慣であるとも言えるでしょう。