Lesson1-3 キレイの基準

前回までのページでは、掃除における基本的な考え方についてまとめ、知識を深めてきました。
こちらのページでは”キレイの基準”と題し、人それぞれで異なる掃除のゴールについて学んでいきます。

清掃活動は企業においても重要な業務として位置づけられることが増え、クリーニングの大切さは家庭内だけに留まってはいません。
その根底に隠された意味にも迫っていきましょう。

“掃除”と聞くと「嫌だな」と反射的に思ってしまいますが、自分のなかで“キレイの基準”を明確に決めておくと気持ちが楽になるものです。

“キレイの基準”とは、汚れに対する許容範囲を定め、どの程度汚れが取り除かれたら自分の中の合格ラインに達するかという、大まかな見た目の基準です。

それは例えば「ポット内に見える水あかを何となく落としたい」というようにざっくりとした目標設定で良く、ハードルを下げた基準を設けることで、持続的な清掃活動に繋がります。

ハードルを下げた設定では、合格ラインまでの作業もさほど難しくなく、目的を達成すればするほど自信となって、また次の清掃箇所に取り組むことができます。

掃除は気合を入れて行うものではなく、
むしろ簡単に手間をかけずに終わらせることを意識して取り組むと
“掃除嫌い”という意識はなくなるかもしれません。

キレイの基準は人それぞれで異なりますが、ながら作業のなかで対応できる術も多くあります。
まずは気負わずに自分の“合格ライン”を設定し、無理のない範囲で快適な住環境を維持していきましょう。

汚れの性質を知る

掃除をするとき、みなさんはどのような道具を使いますか?

掃除グッズを調べると、高性能を備えた掃除機や操作性を重視した清掃用品を多数見つけることができます。

特に暮らしに役立つと思われるのが、用途や場所に応じた洗剤の数々です。
気合を入れて作業しようと重い腰を上げたと同時に、スプレーやクリーナーなど商品を集める方は意外と多いでしょう。

掃除が苦手という方には、専用洗剤を揃えるという癖が見られます。
キッチン周りに効く台所専用洗剤やカビ除去専用洗剤、床専用洗剤など、用途の名前に意識が向けられ、箇所ごとに専用クリーナーを集めてしまうのです。

ご家庭によっては、洗剤の数だけで10種類を超えているというお宅も聞かれます。しかし道具は揃えたものの、思うように汚れは落ちずがっかりしたまま掃除を終えたと言う人も中には多くいることでしょう。

上手くいく掃除のコツは、家の中に潜む汚れの性質を知ることです。

家庭内の汚れの多くは、油や皮脂に由来する酸性汚れであり、
その他水回りで見られるアルカリ性汚れと、
湿度の高さで繁殖するカビやバクテリア汚れの3種類に大別されます。

汚れの種類

・酸性汚れ
・アルカリ性汚れ
・カビ・バクテリア汚れ

汚れの性質を理解し、それらを分解・中和する成分の活用ができれば、効率の良い清掃ができます。

“専用”と謳われた洗剤は確かに効力を発揮しますが、
まずは汚れと洗剤のパワーバランスを考え、対象となる汚れに効果的な洗剤を探っていきましょう。

また汚れのなかには、温度変化により落ちやすい性質のものがあり、
ぬるま湯の使用や外気温の高い日に作業するなど、
汚れ落としの効率アップを図るためのベストな環境も理解しておくといいでしょう。

気づく力

経営の神様と呼ばれた松下幸之助は、掃除の励行を徹底した人物としても有名です。
加えて、彼が設立した松下政経塾の塾生にも、清掃の重要性を説いていたことをご存知でしたか?

一流の経営者は、なぜここまで掃除にこだわり続けてきたのでしょうか。

それは掃除に“気づく力”を見出し、どのような仕事であっても精神を込めることで自分の発展に繋がると信じていたからに他なりません。

「掃除は形式的に行うのではなく、例えば植木の間を掃除していてもこういうふうにしたほうがもっと早くきれいになる。それが木のためにもなると気づく。」

という言葉にあるように、気づきから学びを得るきっかけとして、掃除に深い意義を感じていたのです。

掃除は、身の回りをきれいにするという目的に加え、心の充足感を得るものとして多くの企業で実施される慣行でもあります。

物陰に溜まった埃やごみを発見するということは、すなわち変化に気づく力があるということです。

隅々にまで目を向け、汚れがあれば取り除くという行動の繰り返しは、仕事において問題を見つけ解決していくスキルへと生かすことができます。

こうした習慣は日々の中で役立つものであり、細かな気づきが生産性を高め、業務の精度を上げていく結果に繋がります。

汚れを発見した時、どのような方法でいかに効率よく除去ができるのかと創意工夫する気持ちが人を成長させ、人間力を高めていくと言えるでしょう。

掃除が上手な人は、処理能力の高さも優れています。

企業における清掃活動は決して雑事などではなく、
気づく力を養うためのトレーニングであり、
上役であればあるほど清掃活動に意味を見出している例も見受けられます。