
汚れと科学の関係について考えたことはありますか?
実はモノが汚れるその瞬間には、目には見えないところで化学反応が生まれ、汚れたポイントでは分子レベルで変化が起きています。
化学変化には、物質と物質とが吸着することで引き起こされる科学的な仕組みがあり、吸着した分子を引きはがすことこそが”汚れの除去”に繋がります。
汚れとは科学であり、結合した分子を脱着させることでキレイがよみがえるのです。
Lesson4では科学の観点から、私たちの身の回りで知らずに起こる汚れの化学反応とその解決方法を学んでいきます。
頑固汚れはなぜ落ちないのか、落とすためにはどのような方法が有効であるのかなどを科学的な観点から見つめなおし、違う角度からお掃除の知識を広げていきましょう。
力技ではなく科学の力でラクに落とす

「どれだけ力を入れて掃除をしても汚れが落ちない」と、掃除中に苦労した経験はありませんか?
蛇口やシャワーヘッド、電気ポットの底や鏡などで見かける水あかは、その典型かもしれません。
水あかとは、うろこ状に白く曇りがかったこびりつき汚れを指します。
水回りで多く発生し、加湿機のなかや食洗機内でも多く見られる厄介な汚れですが、付着すれば見た目も良いものではなく、できればスッキリと磨き上げたいところです。
こうしたタフな汚損は力技での対処が難しいものですが、実は適切な道具を選択するだけで瞬く間に掃除することができます。
元を辿れば、水あかの原因は水分中に含まれるミネラル分です。ミネラル分は、マグネシウム化合物やカルシウム化合物を豊富に含みますが、水が蒸発する際にこのミネラル分だけが物の表面に残されます。取り残された成分は金属化合物であり、性質はアルカリ性です。
つまり、水あかとは、アルカリ性を溶かす性質を持つ洗浄剤を使用することで容易に除去することが可能であり、酸性の洗剤を使うことが効率的だと言えます。
市販の洗剤に含まれる液性は中性からアルカリ性のものが多いため、適当に洗剤を選び使用するだけでは結果が得られません。
酸を含むものには、レモン汁やお酢、クエン酸などがありますが、水あか掃除にはクエン酸水の使用がオススメです。対象箇所にクエン酸入り水溶液を吹きかけ、少々時間を置いた後に水で流せば掃除は完了です。
汚れとは化学物質の結びつきであり、”汚れの性質や構造に対して溶かし分解する成分で対応する”ことで、実効性のある掃除が実現します。
Lesson4-2では、汚れに対する対抗策と適用する洗剤について科学的な視点から学びます。
危険な化学反応

塩素系や酸性タイプの洗浄剤を購入する際に、誰もが「まぜるな危険」と赤字で書かれた文字を目にします。
この「まぜるな危険」という短いフレーズについて、科学の視点からその理由を説明しましょう。
身近にある多くの汚れは、物質同士の吸着や化学物質の複雑な結合により作りだされますが、ここに洗剤を投与し、汚れの原因となる物質を溶解・分解するなど対処することで物は清潔さを取り戻します。
しかし、日常的に使う便利な洗浄剤には多様な薬品や成分が含まれており、
洗剤が持つ性質が時として思わぬものに反応し、命に関わる重大な事故を引き起こす危険性を秘めています。
危険要素として知られている化学反応は、塩素系と酸性タイプの洗剤を混ぜ合わせるというものでしょう。
この2種類は、互いが反応し合うことで有毒な塩素ガスを発生させます。
塩素はプールや水道水にも使用される、生活に欠くことのできない成分ですが、高濃度で使えば強い毒性を持つため、使用時は正しい知識のもと活用しなければなりません。塩素ガスの吸入や肌で触れることは、呼吸器や粘膜に異常をきたし最悪の場合には死に至ります。

塩素系洗浄剤は強い殺菌作用が期待できることから、カビの発生やぬめり取りなど水回りでの活躍が多い傾向にありますが、クエン酸やお酢、レモン汁などの酸性と混ざり合うとガスの発生とともに目やのどを痛める危険性が大いにあります。
このように、洗浄剤が混ざり合うことで起こる化学反応には万全の注意を払う必要があり、その怖さを知っておくことこそが、室内を安全に洗浄をする上で重要です。
【塩素系洗浄剤・漂白剤 + 酸 = 塩素ガスの発生】
■ 目・鼻・のど・皮膚・その他呼吸器に重篤な損傷を与える危険性がある
■ 塩素ガス中毒症<最悪の場合死に至る>
【重曹(または炭酸ナトリウム) + 酸 = 二酸化炭素の発生】
■ 密閉容器内で混ざり合うと容器が破裂する危険性がある
【アルミニウム + 酸 = 水素ガスの発生】
■ 水素は可燃性かつ爆発性の性質を持つ物質であり、火気があれば爆発を引き起こす
■ 触れると大火傷や身体に重篤な症状を引き起こす