Lesson4-4 科学に見る汚れ予防②

放置しておけばみるみるうちに汚れが溜まり、ヌメリとなった後は見るのも嫌になるのが水回りの汚れです。

排水溝に付着しやすいヘドロのようなヌメリは、臭いもさることながら見た目にも気持ちの良いものではありません。

シンクや排水溝は、油汚れと同様、日々のお手入れをこまめにすることが掃除をラクにするポイントです。

今回のページでは、科学の力でヌメリを発生させない意外な予防方法や、
汚れ・詰まりを簡単に除去する術について学んでいきます。

ヌメリには”アルミホイル”か”10円玉”

ヌメリの正体とは何でしょうか。

ヌメリはカビと同じように細菌が繁殖したものであり、水気が多く湿度の高い場所で増え続けるバイオフィルムと呼ばれる微生物です。

耳慣れない言葉であるバイオフィルムですが、
実は口腔内で見られる細菌の集合体であるプラークもその仲間の1つであり、
ヌルヌルとした膜が増殖を続け衛生的な環境を侵食していきます。

細菌は髪の毛やせっけんカスを養分とするため、
キッチンのシンクやふろ場の排水溝は使用後すぐにゴミを除去することが、
汚れを発生させない最善の予防策となります。

このヌメリ予防の際に、加えて使用したいのがアルミホイルもしくは10円玉です。

アルミホイルは空気と反応することで、金属イオンを発生させます。
その金属イオンには殺菌効果があり、ヌメリの発生を抑制してくれます。

アルミホイルをボール状に丸め、1~2個を排水溝に投げ入れておくだけでキレイが長続きするため、積極的に取り入れたいお掃除の小ワザです。

また、10円玉には銅イオンの微量金属作用があり、細菌を死滅させる効果が期待できます。アルミホイルと同様に排水溝に入れることでヌメリを防止することが可能です。
アルミボール、10円玉ともに効果は1週間を目安とし、できるだけ汚れを発生させない工夫をしていきましょう。

ヌメリ汚れの簡単除去

一度発生させれば触れるのもためらわれるヌメリ汚れですが、洗浄剤を上手に組み合わせることであっという間にキレイがよみがえります。

合成洗剤派ナチュラル洗剤派どちらのスタイルでもできる、簡単な洗浄方法について知識を深めていきましょう。

また、使用する洗浄剤の特性も合わせて学んでいきましょう。

【合成洗剤で洗浄】

洗浄剤:塩素系漂白剤

悪臭の原因にもなる排水溝汚れには、殺菌作用の高い塩素系漂白剤を用いることで効果的に除菌ができます。
塩素系漂白剤は酸性タイプと混ぜると猛毒の塩素ガスを発生させる危険性を頭に入れつつ、使用方法を守りながら使用していきましょう。

まずは洗浄液を作るところからスタートします。
浴室の排水溝を洗浄する場合には、100倍に薄めた塩素系漂白剤を洗面器に用意します。

<簡単掃除の手順>

手順1: ビニール製の手袋をはめ排水溝周辺の部品をシャワーで流す

手順2: 髪の毛キャッチャーなど細かなパーツはブラシで汚れをこすり落とす

手順3: 洗浄液に部品を全て浸し殺菌を行う

手順4: 元の場所に部品をセットし洗面器の洗浄液を流す

◆塩素系漂白剤の原理

漂白剤の原理をひも解けば、そこには化学反応による色素の分解が隠れています。
塩素系漂白剤は酸素による酸化反応を利用し、黄ばみやシミといった皮脂汚れ(有機物)に有効に作用します。

汚れた分子を酸化というかたちで分解し、結合し合う成分を断ち切ることで酸化漂白していく働きが塩素系洗剤の特性です。

【ナチュラル洗剤で洗浄】

洗浄剤:重曹とクエン酸(食酢でも可)

重曹は酸に強く反応する性質を持つことから、その化学反応を掃除に利用することができます。
食用でもおなじみの重曹はアルカリ性であり、酸性であるヌメリ汚れを撃退するのに適した洗浄剤です。
また腐敗臭などの臭いの元も酸性なため、排水溝の周辺汚れを一掃してくれます。
塩素系洗浄剤のような刺激の強い臭いもないため、使いやすさも1つのポイントです。

まずはクエン酸水スプレー(小さじ1.5:水1カップ)を用意し、お掃除スタートです。

<簡単掃除の手順>

手順1 ヌメリ汚れに重曹を振りかけ5分程度置く

手順2 その上からクエン酸水スプレーを吹きかけ発泡させる

手順3 発泡している間はそのまま待機し、発泡が終わり次第温水で流す

◆重曹と酸の化学反応

重曹と酸が混ざり合うと発泡促進効果が高まり、シュワシュワと表面が泡立って見えます。
これは2つの成分による化学反応であり、双方が触れ合うことで二酸化炭素が発生します。
この泡が汚れと物の間に入り込み、ヌメリを浮かすことから汚れ落としが容易となります。


水回りのヌメリ汚れほど、陰鬱な気分になるものはありません。
しかし、科学の力を借りて少しの時間をかけるだけで、
汚れた排水溝やパーツは元のきれいな姿に戻ります。

目の端で確認しつつも手を付けなければ、次第に汚れは重症化し最終的にパイプのつまりや破損を引き起こしかねません
正しい知識と洗浄剤を使うことで水回りを清潔に保ち、また清々しい気持ちをキープするためにもヌメリ汚れは一掃していきましょう。

科学的な掃除のまとめ

Lesson4では科学に焦点を当てつつ、汚れ発生の原因や洗浄剤が持つ作用などについて伝えてきました。

汚れを科学的な観点からひも解けば、
そこには物の酸化や成分同士の結合、分子構造の変化など、
化学反応は身近なところで静かに起きていることに気がつきます。

こうした化学反応について知識を深めると、汚れはより簡単に落とすことができます。

汚れに対してどのような液性を持つ洗浄剤が有効であるのか、そのパワーバランスを掴むことで、機能的で効率的なお掃除が可能となるのです。


次のLesson5では、居住スペース、トイレ周りなど掃除箇所別の具体的なお掃除方法について学んでいきます。
汚れと洗浄剤が起こす化学反応を存分に活かしつつ、実効性のある掃除をさらに目指していきましょう。

一度覚えてしまえば一生使える掃除術は、家庭内ではもちろんのこと、お掃除起業を考える方にとっても非常に有益となります。

掃除は”時短・簡単・楽チン”の3原則を今一度思い起こしつつ、
効果抜群な掃除方法を具体的に学んでいきましょう。